タバコによる害

タバコはさまざまな病気の原因にその他のがん

その他のがん ― タバコはさまざまながんと関連しています

タバコが肺がんの原因となることは知られていますが、タバコは肺がん以外にも多くのがんと関連しています1)
口腔・咽頭がん、喉頭がん、鼻腔・副鼻腔がん、食道がん、胃がん、肝がん、膵がん、膀胱がん、子宮頸部がんについては、「科学的証拠は、因果関係を推定するのに十分である(レベル1)」と判定されていて、タバコがこれらのがんのリスクを高めることがわかっています1)。また、大腸がん、乳がん、腎盂尿管・腎細胞がん、前立腺がんによる死亡、急性骨髄性白血病との関連については、「科学的証拠は因果関係を示唆しているが十分ではない(レベル2)」と判定されていて、タバコがこれらのがんのリスクを高めているといわれています1)

また、胃がんのリスクについては、タバコを吸っていない人に比べて、1日のタバコの本数が1〜19本の人で1.41倍、20〜24本の人で1.98倍、25本以上の人では2.15倍胃がんのリスクが高くなるといわれています2)。しかし、禁煙をすれば、胃がんのリスクは止めてから5年未満で1.72倍、5〜14年で2.08倍、15年以上で1.31倍になるとの報告があります2)。このように15年禁煙を続けるとタバコを吸わない人と大きな差がなくなることが報告されています2)

喫煙および禁煙による胃がんリスク

喫煙および禁煙による胃がんリスクの図
方法:
2つのコホート研究(研究①:40歳以上の日本人男性9,980人を9年間追跡、研究②:40~64歳の日本人男性19,412人を約7年間追跡)をプール解析し、喫煙が胃がん発症リスクに及ぼす影響について調査
多変量相対リスクは年齢により1年ごとに調整した。コホート1・2は、BMI、胃潰瘍の既往歴、親の胃がんの既往歴、加入している健康保険の種類(5種)、飲酒量、野菜の漬物・味噌汁の1日摂取量を用いて調整した。コホート1に対する多変量相対リスクは、野菜や果物の摂取量についても調整を行った。また、コホート2に対する多変量相対リスクはホウレンソウやニンジン、カボチャ、キャベツ、レタス、青梗菜と果物をどのくらい摂取しているかについても調整を行った。カッコ内は95%信頼区間を示す。
Koizumi, Y. et al.:Int J Cancer 112(6):1049, 2004 より作図

食道がんのリスクについては、タバコを吸っている人では、吸っていない人に比べ食道がんのリスクが5倍程度になるという報告があります3)

喫煙による食道がんのリスク

喫煙による食道がんのリスクの図
対象:
40歳以上のがんの既往歴のない一般住民男性9,008人(コホート1:9.0年間追跡)および17,715人(コホート2:7.6年間追跡)
方法:
コホート1およびコホート2の対象者を前向きに追跡し、プール解析に基づき喫煙、飲酒、緑茶摂取の食道がんに対する関係を評価した。コホートごとのハザード比をCox比例ハザードモデルにより求め、さらに多変量解析により2つのコホートを統合したハザード比を推定した。Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、食道がんのハザード比と95%信頼区間を求めた。共変量として、喫煙、飲酒量、緑茶・コーヒー・紅茶摂取量を用いて調整した。喫煙、飲酒、緑茶摂取量の3つの変数は、それぞれ「現在も喫煙している/いない」、「現在飲酒している/いない」、「現在1日3杯以上の緑茶を飲用している/いない」に分け、そのクロス積の和により多変量解析モデルで評価した。
Ishikawa, A J epidemiol 16(5): 185, 2006より作図
1) 喫煙の健康影響に関する検討会編:喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書 平成28年8月
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000172687.pdf 2022/7/6参照
2) Koizumi, Y. et al.: Int J cancer 112(6): 1049, 2004
3) Ishikawa, A. et al.: J epidemiol 16(5): 185, 2006