タバコはさまざまな病気の原因に脳卒中・心筋梗塞
脳卒中・心筋梗塞 ― タバコにより発症のリスクが高まります
脳卒中は脳血管障害ともいい、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などが含まれます。心筋梗塞は、心臓に栄養を送る血管である冠動脈がふさがって、血が通わなくなった状態です。
どちらも命にかかわる重大な病気です。
タバコは、こうした心臓や脳の病気にも影響を及ぼしています1)。タバコの煙に含まれるニコチンや一酸化炭素などの有害物質によって、血管の収縮、血圧の上昇、心拍数の増加がもたらされ、また、動脈硬化が進行し、血栓ができやすくなるといわれており、こうしたことが脳血管障害や心筋梗塞の原因になると考えられています1)。
タバコを吸うことで、心筋梗塞を発症するリスクは、吸わない人に比べて男性で約4倍、女性で約3倍高くなるといわれています2)。
喫煙による心筋梗塞の発症リスク
- [ ]:95%信頼区間
- 非喫煙者のリスクを1.00として比較


- 対象:
- 年齢40~59歳の一般住民男性19,782人、女性21,500人。
- 方法:
- 対象者をコホートとして、喫煙者と非喫煙者における冠動脈疾患の発症について11年間追跡し、前向き比較検討を行った。Cox回帰により共変量を調整しており、共変量としては、年齢層(5歳ずつの幅で分類)、飲酒量、高血圧か糖尿病の既往歴、運動する頻度、果物・緑黄色野菜・魚介類の摂取頻度、最終学歴を用いた。
また、タバコを吸わない人に比べて、くも膜下出血の発症リスクは3.6倍3)、脳卒中で死亡するリスクは、男性で約2倍、女性で約4倍高くなるといわれています4)。
脳卒中による死亡リスクに及ぼす喫煙の影響

- 対象:
- 30歳以上の一般住民8929人(男性:3972人、女性:4957人)。
- 方法:
- 対象者を、非喫煙者、過去喫煙者、中等度喫煙者(1~20本/日)、高度喫煙者(≧21本/日)に層別化し、1980年から14年間追跡し、脳・心血管疾患の発症を検討した。脳・心血管疾患の相対リスクは、Cox比例ハザードモデルにより求めた。Cox比例ハザードモデルは、年齢(30歳未満/以上)、収縮期血圧、BMI、血清総コレステロール値、飲酒量、糖尿病の既往歴について調整した。
このように、タバコを吸うことで心筋梗塞や脳卒中で死亡するリスクは高まりますが、禁煙することで、心筋梗塞などの虚血性心疾患や脳卒中による死亡リスクが低下するといわれています5)。
禁煙による脳卒中による死亡リスクの低下


- 対象:
- 40~70歳の一般住民男性41,782人、女性52,901人。
- 方法:
- 喫煙の有無や生活習慣別に長期にわたり前向きに追跡し、脳心血管疾患発症や脳心血管死発生状況を検討し、その相対リスクをCox比例ハザードモデルにより求めた。さらに、禁煙時のリスクを1.00として、禁煙後0~1年、2~4年、5~9年、10~14年の各時点における相対リスクを推定した。共変量としてBMI、飲酒量、1日当たりの歩く時間、1週間当たりの運動量、1日の睡眠時間、教育年数、現在の精神的ストレスの程度、果物・魚介類の摂取頻度、高血圧・糖尿病の既往歴を用いた。また、1日の喫煙本数、喫煙を開始した年齢についても、死亡率と禁煙の関連性を評価する際に調整した。
なお、吸わない人に比べて、虚血性心疾患のリスクは1日の喫煙本数がたとえ5本でも1.5倍6)、脳卒中のリスクについては、1日の喫煙本数がたとえ1本でも1.52倍7)高まるといわれているので、健康を維持するためには節煙ではなく、禁煙が第一といえるでしょう。
2) Baba, S. et al. : Eur J Cardiovasc Prev Rehabil 13(2):207, 2006
3) Mannami, T. et al. : Stroke 35 (6) : 1248, 2004
4) Ueshima, H. et al. : Stroke 35 (8) : 1836, 2004
5) Iso, H. et al. : Am J Epidemiol 161 (2) : 170, 2005
6) Law, M. R. et al. : Prog Cardiovasc Dis 46 (1) : 31, 2003
7) Hackshaw,A. et al. : BMJ 360 : j5855, 2018