タバコによる害

受動喫煙とは何か?受動喫煙が子どもに及ぼす健康被害

妊娠中の喫煙が胎児を危険にさらします

妊婦の喫煙による胎児の発育への影響(海外データ)

喫煙妊婦では、非喫煙妊婦に比べて 子宮内発育遅延になる確率が2.07倍※ 児の出生体重が平均142g軽い※ 低出生体重児になる確率が1.59倍※
対象:
ブラジルのペロタス市で出生した児5,166人
方法:
出生後間もない母親と児について調査し、妊娠中の母親の喫煙と児の発育の関連を検討した。ロジスティック回帰分析(社会階級、収入、マタニティスクール、妊娠年齢、皮膚の色、婚姻状態、低出生体重児の出産経験、母体の身長、妊娠前の体重、出産までの診察回数、出生順位、出産間隔で補正) 低出生体重は2,500g未満、子宮内発育遅延は出生体重が10パーセンタイル未満の児とした。
Horta, B. L. et al: Peadiatr Perinat Epidemiol 11(2): 140, 1997 [L20141006205]より作図

子どもが受動喫煙から受ける健康被害は、大人以上に深刻です。

受動喫煙による危険は、妊娠中からすでに始まっています。妊婦への影響としては、流産や早産のリスクが高まるといわれています1)

胎児の発育にも悪影響を及ぼす可能性があります。妊娠中の胎児は、タバコの影響で体重増加が十分ではなく、出生時の体重は、喫煙しない母親から生まれた子どもよりも平均142g低くなるとの報告があります2)。しかも、子宮内発育遅延になる確率は2.07倍、低出生体重児が産まれる頻度は1.59倍高くなると報告されています 2)

つまり、喫煙によって妊娠中から妊婦と胎児は危険にさらされ、発育の妨げになっている可能性があります。タバコを吸っていても、妊娠がわかった時点で禁煙するという女性は少なくありません。しかし、妊娠がわかる前の妊娠初期には、すでに胎児は受動喫煙の危険にさらされていることを考えると、妊娠前から禁煙することが望ましいでしょう。子どもがほしいと思った時から、夫や家族、職場の人に、禁煙を相談してみましょう。

  1. 喫煙の健康影響に関する検討会編:喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書 平成28年8月
    https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000172687.pdf 2022/7/6参照
  2. Horta, B. L. et al: Peadiatr Perinat Epidemiol 11(2): 140, 1997

タバコが子どもの健康と将来を奪っています

子どもの受動喫煙による健康被害は、乳幼児突然死症候群(SIDS)、呼吸器症状(せき、たん、息切れなど)・気管支炎、肺炎、中耳炎などです。なかでもSIDSは、それまで元気だった赤ちゃんが突然死亡してしまう病気です。タバコはSIDSのリスク因子であり、父親と母親が喫煙者である場合は、リスクが5.77倍になるといわれています1)。妊娠中のタバコのリスクも考えると、やはりタバコをやめるのが最善でしょう。

子どもが成長して成人になってからも、胎児のときの受動喫煙の影響が続くと考えられています。成人になってからの肥満、糖尿病、メタボリックシンドロームに関連があることがわかってきました。

タバコを吸うことで、こんなにもあなたの子どもの健康を奪っているのです。子どもの健康と将来を守るため、禁煙を考えましょう。

1) Liebrechts-Akkerman, G. et al: Eur J Pediatr 170 (10): 1281, 2011

乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスク(海外データ)

喫煙妊婦では、非喫煙妊婦に比べて… 父母ともに喫煙する乳幼児は、父母ともに喫煙しない乳幼児に比べてSIDSのリスクが5.77倍に
対象:
1987年~2005年の間に収集されたSIDSの症例142例と2002年~2003年に調査した0~35ヵ月の健康乳児2,841人
方法:
SIDSのリスクファクターとして睡眠時の体勢、妊娠中および出生後の両親の喫煙、早産、母乳栄養の欠如、社会的・経済的状況との関連をロジスティック回帰分析した。(年齢、睡眠時の体勢、早産(38週未満)、母乳栄養、妊娠中および出生後の両親の喫煙、種族的出身、両親の教育レベルで補正)
Liebrechts-Akkerman, G. et al.:Eur J Pediatr 170(10):1281, 2011より作図

換気扇の下の喫煙でも受動喫煙は防げません

喫煙場所別にみた子どもの受動喫煙レベル(海外データ)

喫煙者のいない家庭:1.00、ドアを閉めて屋外で喫煙:1.99、換気扇の近く、またはドアを閉めて屋外で喫煙:3.23 受動喫煙の危険が3倍以上になることも!
対象:
南スウェーデン全乳児前向きコホート研究(ABIS)に参加している2.5~3歳の児で、両親が喫煙している児366人および両親が喫煙していない児433人
方法:
家庭での喫煙状況(室内、換気扇の近く、ドアを開けて屋外、ドアを閉めて屋外 等)について両親に質問調査し、小児の尿中コチニン・クレアチニン比との関係を検討した。ロジスティック回帰分析。
Johansson A et, al. Pediatrics. 113(4), e291, 2004 [L20100804196]より作図

受動喫煙の怖さはよく分ったけれど、「わが家は、換気扇の下やベランダを喫煙場所にしているから大丈夫」と思っている人はいませんか? 

タバコの煙は、換気扇ですべて排出されることはなく、室内に拡散します。また、窓を閉めて屋外のベランダで吸ったとしても、タバコの煙は窓のすき間をとおって室内に入り込みます。このようにしてタバコを吸っている家庭では、タバコを吸わない家庭に比べて受動喫煙の危険が3倍以上と報告されています1)

  1. Johansson A et, al. Pediatrics. 113(4), e291, 2004